作雨作晴

日々の記憶..... 赤尾秀一の日記。

ヘーゲル『哲学入門』 第一篇 存在 第一部 質 第十六節[自存的存在]

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ヘーゲル『哲学入門』 第一篇 存在 第一部 質 第十六節[自存的存在]

C. Fürsichsein 

§16

 Indem sich durch die Veränderung die Beschaffenheit überhaupt aufhebt, hebt sich auch die Veränderung selbst auf. Das Sein ist hiermit in sich selbst zurückgegangen und schließt Anderes von sich aus. Es ist für sich.(※1)

 C. 自存的存在

第十六節 

変化を通して性状そのものが止揚されることによって、変化それ自体もまた止揚される。これによって存在は自己自身のうちに回帰し、他者を自らの外に排除する。存在は それ自体のために  存在する。

 

※1
「変化が止揚される」とは、存在がもはや外から与えられる刺激や関係によってのみ変化し続ける有限性の段階を超え、自らの内に自己を基礎づけて立つ段階に至ることである。

たとえば蝶は、卵→幼虫→蛹→成虫という発展を経て自己を完成させる。この連続的な変化は最後に「蝶」という自己完結した生の形態に収まる。ここで「成虫」としての蝶は、他者による規定ではなく、自己自身の概念(Gattung=種の本質)に従って存在する。これが「自存的存在」の一例である。

 

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行旅夏といふことを

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行旅夏といふことを 

雲雀あがる おほ野の茅原 夏くれば 
    凉む木かげを ねがひてぞ行く
                   (山家集238)

この和歌には三つの構図が描かれています。季節は夏の広野で、茅草が一望の下に広がっています。さわやかな初夏の頃には空高くに雲雀が舞い上がっていました。今は夏の強い日差しを受けながら、一人の旅人が、その広野一面の茅原の中を、涼しげな木陰を求めて歩みを進めています。

この旅人は一体何を求めて旅しているのでしょうか。

強い日差しの照りつける茅の広がる夏の野は広く大きく、果てしもない大野にくらべれば、そこを歩く旅人は小さな存在です。旅人の旅の目的はもちろんわかりません。
かってこの大野を横切ったときには空には雲雀が上がっていましたが、今は季節は夏であり、きびしい陽射しが空から刺してきます。旅人は夏の暑さに耐えきれず、涼しい木陰を求めてひたすらに歩いていきます。はるか遠くには木陰がありそうです。

この暑さの中では、ただ涼しさを求める肉体の欲求を満たすことだけが旅人の頭の中を占めていて、旅の目的などはすでにすっかり忘れてしまっているようです。今は木陰の下で安らうことさえできれば身も心も満たされます。木陰の下にたどりついてこそ旅人は憩うことができます。

精神も肉体もはかなく有限である人間としての旅人は、暑い日差しの夏の真っただ中で、さわやかな初夏のころには空に舞い上がっていた雲雀のことを思い出しながら、憩える木陰を求めてただひたすら歩いていきます。歌人の西行はそうした人間の姿を描いています。

 

※追記

ヘーゲル美学の立場から、西行という人間像と和歌の世界をとらえようとしています。

ヘーゲル哲学の応用的解釈の事例として、芸術、宗教、国家など、生活における具体的な対象をどのように認識するか参考にしていただければと思います。

ヘーゲル『哲学入門』 第一篇 存在 第一部 質 第十五節[変化]

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ヘーゲル『哲学入門』 第一篇 存在 第一部 質 第十五節[変化]

§15

c)  Durch seine Qualität, durch das, was es ist, ist Etwas der  Veränderung  unterworfen. Es verändert sich, insofern seine Bestimmtheit im Zusammenhang mit Anderem zur Beschaffenheit wird.(※1)

第十五節[変化]

c) その質、すなわちそれが何であるかということによって、或るものは 変化 にさらされる。 或るものの規定性が、他なるものとの関係において性状(Beschaffenheit)へと移行することが変化である。

 

※1
前節で明らかにされた「質」は必然的に「変化」することが示される。質(Qualität)は静的ではなく、変化そのものを本質として含んでいる。或るものの規定性(Bestimmtheit)が他のものとの関係においては性状(Beschaffenheit)として現れること、これが変化である。

たとえば、水は「液体」という規定性を、すなわち「質」をもつが、しかし、空気といった他のものの気温や気圧などと関係することによって、水は「氷」や「水蒸気」といった性状(Beschaffenheit)として現れる。規定性、質はつねに変化にさらされている。 

 

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